帯によると
「世界一簡単なワインの教科書」
とのことだが・・・。
ざっくりどんな本?
かわいめのイラストをふんだんに使ったストーリー形式?で
とっつきやすく
ソムリエでもある著者がワインの基礎を教えてくれて
ワインをあまり知らない人がなんとなく知ったような気になれる本、
といったところか。
「ワインの基本」と題される第1章、
「旧世界」と冠され欧州ワインについて語る第2章、
「新世界」すなわち欧州以外の世界のワインについての第3章
の三部構成である。
それにしても売れている
いやそれにしてもベストセラーのようだ。
手元にある本は2015年の初版本なのだが、
これを書くにあたって本屋に行って
棚に置いてある1冊(流石にもう平積みではなかった)
の裏表紙をめくってみたところ
「2023年11月27日 第26刷 累計16万1千部」
なんとわざわざ累計部数まで合わせて書いてある。
部数までいちいち書いていることにいやらしさは感じるものの
まぁ、漫画にすることで間口を広げて
ワインに興味を持ち始めた人が最初に手に取る本として
広く受けているのだろう。
あらすじ
まあワインの概説本なのであらすじも何も、
という感じではあるのだが。
ワイン葡萄の品種の特徴を擬人化したキャラクターたちが
高校生として学校に通う世界に迷い込んだ主人公。
主人公とブドウ(生徒)たちとの交流を通して
ワインの世界を解説していく という本である。
書いていても(おそらく読んでいても、だとは思うが)
これだけ見るとなんのこっちゃ、である。
読んでみてもなんのこっちゃ
しかし驚いたことにその感想は実際に読んでみてもそれほど変わらない。
出だしは悪くないが・・・
第1章の内容はいいと思う。
ワインのいろはが書いてあるので、この本の
真価は第1章だろう。
しかしいかんせんそれ以降の章は
本を書き慣れてない人が
本を読み慣れてない人に向けて書いている
そんな印象が終始付きまとう。
ワイン1年生というタイトルからしても
そもそものコンセプトにしても
ワイン初心者(下手したら全く知らない人)
をターゲットにしているはずである。
しかし、読んでみて初心者向けなのは
先にも触れた第1章くらいのもので
第2章のフランスの項に至っては
怒涛の地名・品種のカタカナラッシュに混じって
二言目には安価なボルドーは失敗するだとか
5千円以下のブルゴーニュは飲むに値しないだとか
安いシャブリはがっかりするとか
やたらハードルを上げてくる。
ちなみに第1章では
赤はボルドーとブルゴーニュ、
白はシャブリとリースリングの
「王道」4種類をまずは味わってみましょうと書いてるのに、だ。
え?ちょっと待って。
よく知りもしない興味持ち始めたばかりの嗜好品で
いきなり5千円とかのそこそこの値段のものを4種類とか
買わなきゃダメなの?
そんなん言われたら「んじゃやめとこ」ってならない?
(ソムリエいう職業は儲かるのかもしれませんが、
我々庶民はそうではないので。。。)
例え話も好みがわかれる・・・?
んで、まあ親しみやすくするためかもしれないが
エヴァだのアイマスだのラブライブだのとアニメ(?)の例え話が
随所にあるが正直駄々滑っていると個人的には思うし、
そもそもワインの葡萄品種の特徴を擬人化するというコンセプトも
いかんせん無理くり取ってつけた感が否めない。
同じ品種でも地域が変わると特徴が変わる説明に
同じ見た目の違う性格の別人物として出てくるとか
「どういう意味??」ってなるし。
でもって2章以降は初心者に薦めたいんだか
飲み慣れた人に共感して欲しいんだかよくわからない話が
延々続く。
とにかく自分がこの本のターゲットじゃないことはわかったが
じゃあ誰に向けた本なのかというとこれがピンとこない。
強いていうなら、この本を読みながら章ごとに色々なワインを
飲みすすめていけばまだ理解が深まるのかもしれないが、
ワインに慣れ親しむにあたって常に傍に置いておきたいような
本ではない。
サクッと読んで「へー」と思って後は売るなり本棚に戻すなり
するような類の本である。
この本は「ワインのいろは+フランス編」にしといた方が
それに加え、第2章・第3章はそれぞれ
「旧世界」、「新世界」と銘打ってヨーロッパとその他の
ワイン産地を紹介しているのだがその紙幅の割き方の
偏りが半端ではない。
バランスというものがあるだろうよ
「フランスが全てのワインの手本であり原型である」という
著者の強い信念があるのは、実際に本書にその通りの記述があるので
わかるので理解はしている。
しかし、である。
第2章中のフランスの項は地域名どころか
村名単位で80ページ以上にわたって紹介するのに対し、
その他のヨーロッパ(イタリア・スペイン・ドイツ)は
全て足してで20ページ足らず、
その他の世界の全域が第3章として40ページそこそこというのは
いくらなんでもバランスを欠いていやしないか。
そんなことをするくらいならこの本は第1章のワインのいろはと
フランスワインの詳細だけの二部構成にして、
それ以外の地域を2冊目として別に出版すべきだったのではないか。
(なお、実際の続編は『図解 ワイン一年生 2時間目 チーズの授業』
というタイトルで本書に輪をかけてしょうもない本である。出ている。)
そもそも初心者が飲むことが多いであろう価格の低めの
わかりやすい味のワインの多くが新世界のものであり、
旧世界であればイタリアやスペインのものである。
そこを誤魔化し程度に触れて初心者向けの本でございと
謳うのは流石にいかがなものなのか。
総評として
なんだかんだ書いたが、ワインに興味を持ち出した
ばかりの人が最初に読むには悪い本ではないだろう。
そういった人には是非第1章だけしっかり目に読んで
第2章・第3章以降は走り読みしてほしい。
一つ個人的に共感できるところは、後書きにあった次の一文だ。
ワインをちゃんと飲もう、味を追いかけようとしたとき、
「味わう」という行為をあらためて知った
学生の時にコーヒーにハマった時もそうだったし
ワインに興味を持って飲み出した時もそうだったが
きちんと意識を向けると色々きちんと感じ取れる
嗜好品の一つがワインである。
私も一人のワイン好きとして、同じように感じられる
人が増えてくれることは嬉しいと思うし、その意味で
本書のような本の存在意義は存外大きいのだと思う。
